肌荒れが食物アレルギーの原因に？「経皮感作」のメカニズムと予防策

【知っておきたい】肌荒れが食物アレルギーの原因に？「経皮感作」のメカニズムと予防策

「うちの子の湿疹、もしかして将来アレルギーになるの？」
私も子育て中に同じ悩みを抱え、情報収集やスキンケアに奔走した経験があります。
この記事では、小児科医やアレルギー専門家の意見、最新の研究データをもとに「経皮感作」の仕組みと、今日からできる予防策をわかりやすく解説します。

アレルギーというと、食べたり吸い込んだりすることで症状が出るイメージが強いかもしれません。しかし、最新の研究によると、皮膚の状態が食物アレルギーの発症に深く関わっていることが明らかになってきています。

特に、皮膚のバリア機能が十分に機能していない状態、例えば湿疹があるときなどに、特定の食物成分が皮膚に触れることでアレルギー体質になってしまうことがあるのです。これが「経皮感作」です。

このメカニズムを知ることは、お子さんを食物アレルギーから守るために非常に重要です。なぜ肌荒れが食物アレルギーに繋がるのか、その詳しいメカニズムを見ていきましょう。

「経皮感作」とは、皮膚を通してアレルゲン（アレルギー反応を引き起こす物質）が体内に侵入し、そのアレルゲンに対して体がアレルギー反応を起こす準備をしてしまう状態（感作）になることを指します。

通常、健康な皮膚は外部からの異物やアレルゲンが体内に侵入するのを防ぐ「皮膚バリア機能」という働きを持っています。このバリア機能がしっかりと働いていれば、たとえ食物成分が皮膚に触れても、アレルギー反応を引き起こすことはほとんどありません。

しかし、乾燥やアトピー性皮膚炎などによって皮膚のバリア機能が低下している状態だと、本来ならば侵入できないはずの食物由来のアレルゲンが皮膚の隙間から容易に入り込んでしまいます。

皮膚からアレルゲンが侵入すると、皮膚の中にいる免疫細胞がそれを「異物」として認識します。ここで問題となるのが、免疫細胞がその異物に対して過剰に反応するような「誤学習」をしてしまうことがある点です。

通常、食物として口から摂取されたアレルゲンに対しては、体はアレルギー反応を起こさないようにする「免疫寛容」という仕組みが働きます。しかし、皮膚から侵入した場合、この免疫寛容がうまく働かずに、アレルギー反応の準備段階であるIgE抗体が作られてしまうことがあるのです。

一度IgE抗体が作られ、感作が成立すると、次に同じ食物を口から食べたときに、IgE抗体がアレルゲンと結合し、体内でアレルギー反応を引き起こす化学物質（ヒスタミンなど）が放出され、じんましんやかゆみ、呼吸器症状、消化器症状などのアレルギー症状が出現します。

経皮感作による食物アレルギーの発症リスクが特に高いと考えられているのが、乳児期、特に湿疹がある赤ちゃんです。

皮膚バリア機能の未熟さ: 赤ちゃんの肌は大人に比べて皮膚の厚さが半分ほどしかなく、もともとバリア機能が未熟です。
湿疹によるバリア機能の低下: 乳児湿疹やアトピー性皮膚炎があると、皮膚のバリア機能がさらに低下し、アレルゲンが侵入しやすい状態になっています。
環境中の食物アレルゲン: ダニやハウスダストだけでなく、室内のほこりには食べこぼしなどに由来する食物成分が含まれていることがあります。赤ちゃんが肌を露出して床で過ごしたり、顔をこすったりすることで、これらの食物アレルゲンが湿疹のある皮膚に触れてしまう機会が多くなります。実際に、湿疹がある赤ちゃんは、湿疹がない赤ちゃんに比べて卵やピーナッツなどの食物アレルギーを発症するリスクが高いことが研究で示されています。(参考: 乳児期の食物アレルギーとの関わり – 福岡県医師会)

過去には、特定の食物成分（加水分解コムギ）が配合された石鹸を日常的に使用していた方に、小麦アレルギーが発症した事例も報告されており、経皮感作のメカニズムが注目されるきっかけの一つとなりました。(参考: 経皮感作による食物アレルギー～スキンケアによる予防～ – 東徳島医療センター)

経皮感作による食物アレルギーの発症を防ぐためには、皮膚のバリア機能を良好に保つことが非常に重要です。特に乳児期からの適切なスキンケアが推奨されています。

徹底したスキンケアと保湿:
- 毎日、石鹸を使って汚れやアレルゲンを優しく丁寧に洗い流しましょう。ただし、ゴシゴシ洗いすぎたり、洗浄力の強すぎる製品を使ったりしないように注意が必要です。
- お風呂上がりには、すぐに（目安として15分以内）保湿剤を全身にたっぷりと塗りましょう。乾燥している部分は1日に複数回塗り直すことも効果的です。保湿によって皮膚のバリア機能が高まり、外部からのアレルゲンの侵入を防ぐことができます。(参考: 赤ちゃんの食物アレルギー予防にスキンケア？！その理由や予防方法とは – Pigeon.info)
湿疹の早期発見と適切な治療: 湿疹ができている場合は、自己判断せずに早めに小児科や皮膚科を受診し、医師の指示に従って適切に治療することが重要です。湿疹を早期に治し、皮膚を健康な状態に保つことが、経皮感作を防ぐ上で非常に効果的です。(参考: 乳児期に行うスキンケアがポイント食物アレルギーの予防と治療 – ドクターズ・ファイル)
皮膚への食物接触に注意: 食事中や食後に口の周りなどに食物が付着した場合は、放置せずに優しく拭き取り、必要に応じてワセリンなどで保護することも有効です。

近年の研究では、乳児期早期からの積極的なスキンケアによって、アトピー性皮膚炎だけでなく、食物アレルギーの発症リスクも低減できる可能性が示されています。(参考: 正しい知識で食物アレルギーを予防しよう – 小児科オンラインジャーナル)